あらすじ
会社の同僚と平凡な結婚をし、ひとり息子にも恵まれ、専業主婦として穏やかに暮らす葉月みづほ。彼女はある夢を実現するために、生活費を切り詰め、人知れず毎月二万円を貯金していました。二年以上の努力が実り、夢を実現した喜びも束の間、夫に二百万円以上の借金があることが発覚します。
さまざまな事情で「今より少し、お金がほしい」と願う人たちの切実な思いと未来への希望を描いた、お金との向き合い方を考えさせられる物語です。
引用元:新潮社『財布は踊る』作品ページ
感想
『財布は踊る』というタイトルを見たとき、私は「お金をテーマにした小説」くらいの印象しか持っていませんでした。
しかし実際に読んでみると、この作品が描いていたのは、お金そのものではありません。
お金と、どう付き合って生きていくのか。
その答えを、それぞれ違う人生を歩む登場人物たちを通して描いた物語でした。
この作品のキーアイテムは、一つのルイ・ヴィトンの財布です。
その財布がさまざまな人の手へ渡っていくことで、それぞれのお金に対する価値観や向き合い方が描かれていきます。
同じ財布なのに、持ち主が変わるたびに見える景色も変わる。
その構成がとても面白く、一つの長編小説を読んでいるような感覚になりました。
印象に残った二人
私が特に印象に残ったのは、善財夏実こと蛇川茉美と、平原麻衣子です。
蛇川茉美は、これまで自分が本当にやりたい仕事ではなく、周りから求められる仕事を優先して生きてきました。
しかし平原麻衣子との出会いをきっかけに、自分が納得できる仕事へと踏み出します。
収入は少し減ったとしても、やりがいを持って働く姿はとても爽快でした。
「収入が高いこと」だけが幸せではない。
自分が納得できる働き方を選ぶことも、お金との付き合い方の一つなのだと感じました。
一方、平原麻衣子は幼い頃から家庭の事情でお金に苦労し、自分の将来を諦めかけていました。
しかし、お金の知識を身につけたことで人生が少しずつ変わっていきます。
奨学金を返済しながら投資信託を始め、着実に貯蓄を増やしていく姿は、とても現実的でした。
私はこの場面を読んで、「お金は知識によって人生を守ることができる」と感じました。
ただ漠然と不安を抱えるのではなく、正しい知識を身につけることが未来への安心につながる。
そんなメッセージを受け取った気がします。
葉月みづほの姿に希望を感じた
物語の始まりでは、葉月みづほが昔から憧れていたルイ・ヴィトンの財布を買うために、毎月少しずつ節約を重ねる姿が描かれます。
努力が実り、念願だった財布を手に入れた時は、こちらまでうれしくなりました。
しかし、その喜びも束の間、夫がリボ払いによって二百万円以上の借金を抱えていたことが判明します。
ここから物語は大きく動き始めます。
決して順風満帆ではありません。
それでも、みづほは立ち止まりませんでした。
埼玉の中古物件を購入し、不動産投資を学び、やがて法人化して会社を立ち上げるまでになります。
まるでシンデレラストーリーのような展開ですが、「運が良かったから成功した」という印象ではありませんでした。
知識を学び、行動し続けた結果として人生を切り開いていった姿に、私は大きな希望を感じました。
お金は人生を変える
『三千円の使いかた』を読んだ時、私は「お金の使い方には価値観が表れる」と感じました。
一方、『財布は踊る』を読んで感じたのは、お金は人生を変える力を持っているということです。
もちろん、お金には人を苦しめる力もあります。
リボ払いや借金、投資の失敗など、この作品にはお金の怖さも数多く描かれていました。
でも、それ以上に印象に残ったのは、お金は敵ではないということです。
正しい知識を身につけ、自分で考え、行動することで、お金は人生を支えてくれる存在にもなります。
結局、お金に振り回されるか、お金を味方につけるかは、自分次第なのだと思いました。
実はこの作品を読み終えてから、お金についてもっと知りたいという気持ちが強くなりました。
FP3級にも挑戦してみたい。
そう思えたのは、この作品が「知ること」の大切さを教えてくれたからです。
総評
『財布は踊る』は、お金について学ぶためだけの小説ではありませんでした。
お金を通して、人の価値観や生き方、そして未来への希望を描いた作品です。
誰もがお金の悩みを抱える時代だからこそ、多くの人に読んでほしい一冊だと感じました。
お金は人生を変えてしまう力があります。
でも、その力をどう使うかを決めるのは、お金ではありません。
自分自身です。
この作品を読み終えた今、私も葉月みづほのように、将来「素晴らしい人生だった」と胸を張って言えるよう、一歩ずつ知識を身につけ、行動していきたいと思いました。



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