私は読書が好きで、本屋へ行くと「今日はどんな本と出会えるかな」と思いながら店内を歩く時間が好きです。
そんな私が最初に出会った原田ひ香さんの作品は、『三千円の使いかた』でした。
タイトルを見たときは、「お金の話なのかな?」というくらいの気持ちで手に取った一冊でした。
ところが、読み終えたあとに心に残ったのは、お金の知識だけではありませんでした。
家族との関わり方、自分らしい人生の歩み方、そして何気ない日々の暮らしを大切にすること。
「お金について考える本だと思って読んだのに、こんなに自分の暮らしについて考えさせられるんだ」と感じたことを覚えています。
そして、「この作家さんの他の作品も読んでみたい」と思うようになりました。
そこから、
・『財布は踊る』
・『そのマンション、終の住処でいいですか?』
・『ランチ酒』
と読み進めました。
何冊か読んでみて、私はあることに気づきました。
原田ひ香さんの作品には、作品ごとにテーマは違っていても、共通する「暮らしへの優しさ」があるのではないか、と。
今回は、私が実際に4冊読んで感じた、原田ひ香さんの作品の魅力について書いてみたいと思います。
日常を描いているからこそ、心に響く
原田ひ香さんの作品に登場するのは、特別な才能を持った人や、誰もが憧れるような華やかな人生を送っている人ばかりではありません。
描かれているのは、仕事、お金、家族、住まい、食事、将来への不安など、私たちが普段の生活の中で向き合っていることです。
だからこそ、読んでいると「この気持ち、分かる」と思う瞬間があります。
私自身、30代になり、結婚して子どもを育てるようになってから、「自分の人生だけを考えていればよかった頃」とは、悩みの種類が変わったと感じています。
家族のことを考えながら、自分自身のことも考える。
将来のことを考えながら、今日の暮らしも大切にする。
そんな毎日の中にいるからこそ、原田ひ香さんの作品に出てくる登場人物の迷いや悩みが、以前より身近に感じられるのかもしれません。
完璧ではない人たちが、迷いながらも自分なりの答えを探していく。
その姿に、私は何度も「私も私のペースでいいのかもしれない」と思わせてもらいました。
「暮らし」を大切にする視点が好き
私が原田ひ香さんの作品で特に好きなのが、「暮らし」を丁寧に描いているところです。
『三千円の使いかた』では、お金との向き合い方。
『財布は踊る』では、お金が人の人生に与える影響。
『そのマンション、終の住処でいいですか?』では、住まいと人生の関係。
『ランチ酒』では、食事と心のつながり。
それぞれ扱っているテーマは違います。
それでも、どの作品にも「毎日の暮らしをどう生きるか」という視点があるように感じました。
私は普段、家事や子育てなどに追われていると、「もっと頑張らなきゃ」「何か新しいことをしなきゃ」と思ってしまうことがあります。
でも、原田ひ香さんの作品を読んでいると、今ある生活にも目を向けたくなるのです。
豪華な旅行や高価なものだけが幸せなのではなく、好きな本を読むこと。
美味しいコーヒーを飲むこと。
家族と何気ない会話をすること。
そんな小さなことも、ちゃんと自分の人生を作っている。
読み終えたあとに、「今の生活も悪くないな」と思わせてくれるところが、私はとても好きです。
食べ物の描写が、とにかく魅力的
4冊の中でも、特に印象に残っているのが『ランチ酒』です。
定食や家庭料理、お酒に合う一品料理など、決して特別に豪華な料理ばかりではありません。
それなのに、とてもおいしそうに感じる。
私はその理由は、料理そのものだけではなく、「その料理を食べる時間」まで丁寧に描かれているからだと思っています。
誰かと食べる食事だけではなく、一人で食べる食事にも意味がある。
そう思わせてくれるところにも惹かれました。
私自身、一人でランチをする時間を大切にしています。
以前、「心が疲れた日に、私がしている3つのこと」という記事でも書きましたが、一人でゆっくり食事をする時間は、私にとって心を整える時間の一つです。
誰かに合わせなくてもいい。
食べたいものを自分で選んで、自分のペースで食べる。
そんな何気ない時間が、思っている以上に自分を回復させてくれることがあります。
だからこそ、『ランチ酒』を読んだときには、「分かるなあ」と自然に共感しました。
食事は、お腹を満たすだけではなく、心まで満たしてくれる。
そんなことを改めて感じさせてくれる作品でした。
「頑張りすぎなくてもいい」と教えてくれる
原田ひ香さんの作品に出てくる人たちは、完璧ではありません。
失敗もするし、迷うこともあります。
人生の選択を間違えたと思うこともある。
それでも、その人なりの答えを探しながら前へ進んでいきます。
私は以前、「もっと頑張らないと」と思って、自分を追い込んでしまうことがありました。
家事も、子育ても、自分のことも、全部ちゃんとやらなければいけないと思ってしまう。
でも、そんなときに原田ひ香さんの作品を読むと、「少しくらい立ち止まってもいいんじゃない?」と言われているような気持ちになります。
「今日は今日でよかった」
「少し休んでもいい」
そんなふうに、肩の力を抜かせてくれるのです。
読み終えたあと、少しだけ前を向ける
私が原田ひ香さんの作品を好きな一番の理由は、読後感かもしれません。
物語の中ですべての問題が解決するわけではありません。
人生には、簡単に答えが出ないこともあります。
それでも読み終えたあとに、「明日も悪くないかもしれない」と思える余韻が残ります。
劇的なハッピーエンドというより、日常に戻っていくための小さな勇気をもらえるような感覚です。
私はこの「少しだけ前を向ける感じ」がとても好きです。
こんな人におすすめしたい
原田ひ香さんの作品は、こんな人におすすめしたいです。
・毎日を一生懸命頑張っていて、少し疲れている人
・家族や仕事、お金など、暮らしについて考えることが増えた人
・自分らしい幸せについて考えてみたい人
・食事や住まいなど、日常の描写が好きな人
・読み終えたあとに、少し心が温かくなる小説を読みたい人
特に、「最近ちょっと頑張りすぎているかもしれない」と感じている人には、一度読んでみてほしいと思います。
おわりに
私は最初に『三千円の使いかた』を読んだとき、「この作家さんの作品をもっと読んでみたい」と思いました。
そして実際に何冊か読んでみて、その気持ちは間違っていなかったと感じています。
作品ごとにテーマは違っていても、どの物語にも共通しているのは、暮らしに寄り添う優しさです。
何か特別なことが起こらなくてもいい。
今日の夕飯を少し丁寧に作ってみる。
自分のために美味しいコーヒーを淹れてみる。
読みたかった本を少しだけ読む。
そんな小さなことも、自分の人生を大切にすることなのかもしれません。
原田ひ香さんの作品は、そんな当たり前の日常を、もう一度大切にしたくなるような気持ちにさせてくれます。
もし今、毎日を頑張りすぎて少し疲れているなら。
「もっと頑張らなきゃ」と思うのではなく、まず一冊、本を読んでみるのもいいかもしれません。
私もこれから、新しい作品との出会いを楽しみにしています。


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